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秋田と釜石


企業クラブの命運は企業力にかかっています。新卒者を惹きつけられる企業であって、人的、物的にラグビーに投資できるだけの企業体力があり、かつ、企業としてラグビー部をサポートするという経営意思があればよい。これはこれで大変なことですが、企業クラブの場合、少なくともソリューションは明快です。

地方の一工場ではあるものの、新日本製鐵という世界的な大企業と秋田市役所では、役所であるが故の制約もこれあり、企業力で釜石が有利であったわけです。

他方、地域クラブの場合、その行方を左右するのは、「地域のラグビー力」です。日本代表の力が、日本全体のラグビー力の反映であるように、地域のトップクラブの力とは地域のラグビー力の総和であるということです。

地域のラグビー力なんて小難しく書きましたが、簡単に言えばラグビーがいかに盛んかということです。
ラグビーを志す若者がたくさんいる(そもそもそういう子供達を育てることから始まりますが)、彼らがプレイする環境がハードウェア、ソフトウェア両面で整っている、ラグビーに対する人々の関心が高い、企業や行政の支援があるなど、様々な要素が含まれます。一企業のラグビー力よりも、遙に複雑な要素が絡んできますから、地域のラグビー力を高めることはよほど大変です。

企業クラブの場合、選手はどこからでも引っ張ってこられますが、地域クラブの場合、そうはいかない。そこに食い扶持があって、そこを生活圏とする人が入るのが地域のクラブの本態です。KSWの場合、まだ企業クラブの尻尾がついているので、ここが多少曖昧なのですが、基本的にはそういうことです。

ただ、釜石には特有の事情として、ラグビーをしたいがために来てくれる若者がいます。釜石ブランドの訴求力がまだ残っているからですが、これもいつまで続くかわかりません。今より強かった新日鐵時代でさえ、新卒のリクルートは容易でなかったそうですから。新日鐵の社員として、あるいは釜石ブランドに望みを賭けて釜石に来てくれる若者が、今後、どれだけいるのか、少なくとも楽観はできません。

話をタイトルに戻します。秋田と釜石。秋田は県庁所在地でもあり、雇用環境も釜石よりはよいはずですし、高校の有力どころは秋田、男鹿に固まっており、選手の集積にも有利に働きます。ということで、ほぼ100%秋田ブラッドのチームが出来上がっています。それで、あれだけ戦えるというのは、地域のラグビー力が高い証左です。

KSWを強くするためには、迂遠であろうと地域のラグビー力を高めていかなければならない。多くの若者がラグビーに親しむこと、そうして育った有為なプレイヤーが、釜石なり岩手に定着できる雇用環境をつくること・・・課題はたくさんあります。そのために何をすべきか、これはKSWだけではなく、岩手のラグビー人がともに取り組んでいかなければならないことです。


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くどいうようですが、私は、地域クラブが本来、主体であるべきだと思っています。職業生活とセットになっていなければ、根無し草の日本的クラブでラグビー人生が終わる -根無し草日本的クラブを否定はしませんけれども-どんなにがんばってもクラブの枠からは出られない、そういう環境はよろしくない。だから、越前屋君が秋田に戻っても、一定のレベルでラグビーが続けられる環境があることは喜ばしいと思います。(KSWに見切りをつけた移籍でないとすれば・・・)

ただ、トップクラスを目指すのであったら、アマチュアの地域クラブの時代では、残念ながら、ない。ラグビーユニオンのプロ容認以降、各国ともトップクラブはプロフェッショナルでないと成立しなくなっています。地域に関係なく選手はポジション獲得を目指し、時に国を越えてクラブを渡り歩くことが常態となっています。

日本ではラグビーのプロ興行は成立しようもないので、企業がいよいよそのクラブを実質プロチームとして抱えています。企業クラブというのは、なかなか巧みな仕組みで、一流企業で食い扶持が確保された上(それも多くは引退後も!)、会社の配慮の下でラグビーができる、選手から見ても歓迎できるシステムです。諸外国からはかつて実質プロだと非難されていたものですが、プロ化容認以降、日本では企業クラブの実態が追認された、更に契約選手も入れて、プロ化を進展させたといえるでしょう。

そういう環境のもと、地域クラブにどこまで期待していいのか、微妙なところです。

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(しかし、企業名を冠したクラブを応援しようと人はどうやって思うのだろう?
競技場で「N!E!C!」って、会社関係者以外に叫ぶ人がいるだろうか?
NECのPC使ってればNEC応援しようと思うか?いや、洗濯機は東芝だし、ビデオデッキは三洋だ、乗ってる車はトヨタだぞ、むむむ、鋼板は神鋼製かもな、やッ、バイクはヤマハだったし・・・手にはしたビールはサントリー。

古顔はそれでもまだよいが、例えば、セコムみたいに下位リーグから上がってきたチームを、一般のファンは、どうやったら応援しようという気になるだろうか?
・・・・企業クラブはそのチームを応援する理由が何とも見つけにくいのだ。

だから、日本選手権の準決勝で、あの客の入り!いかに雨天とは言え・・・)

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今日は、何だかいろいろコ理屈をコネてしまいました。失礼
by skipoyaji2 | 2005-02-20 12:02 | Comments(0)


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